2010年07月06日
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感想・映画『告白』

Written By: トーノZERO連絡先

 先週、9割まで見るつもりだったのに見なかった映画ですが、今週も積極的に上映するほどの人気だったので見てきました。

「というわけで感想は?」

「気持ち悪いほどの怪作でスカッとしたかな」

「良かったのか悪かったのか、どっちだ?」

「良かったぞ。人気があるのも分かるけど、かなりぐだぐだの内容だ」

「映画としての出来が悪いということ?」

「いやいや。きれい事にしないで、ぐだぐだの内容を上手くぐだぐだに描いてある」

ネタバレ感想 §

「ってわけで、ネタバレあり感想を頼む」

「うん。まず勘違いしていたが、この映画は犯人を捜す映画ではない。犯人は最初から分かっている」

「ということは?」

「復讐の映画だ」

「それはえげつないな」

「スカッとするほどえげつないぞ」

「そ、それは……」

「で、結局のところ、この映画で描いているのは『賢いつもりの僕』という典型的な病理だ。だから一般性があって、鑑賞できる作品になっている」

「賢いつもりの僕?」

「うん。たとえばさ。小学生のとき、女教師がニクロム線と言っているので、それはエナメル線だと訂正した。あとでその通りだと女教師が謝ってくれた。でも、賢いつもりの僕という類型は、口先が上手いだけで実際の行動に関してはぼろが出る。そういう奴が今は多いわけだ。頭でっかちというわけだね」

「なるほど」

「でも、そういう賢いつもりの僕という類型は過剰に保護されがちだ。日本には、そういうのがいいという信仰のようなものが存在するからだ」

「それも困るね」

「うん。困るから、私的な復讐劇というドラマが説得力を持つわけだ」

「なるほどね」

「だから、これは大なり小なり誰でも感じる可能性がある、あのうざいガキに復讐してやりたいという欲求を実際に実行せずに解消する便利な装置として機能する」

「なるほど」

「それはさておき、構成も上手いな。最初に女教師が主人公かと思わせて、実は女生徒の方にウェイトが移っていく。真の主人公はこっちかと思いきや殺されてしまう。そして最後に退場したはずの女教師に話が戻ってくる。実は黒幕として全体のバックにいたことも分かる」

「そうか」

「それに逆回りの時計の演出も上手いね」

邦画って §

「でも思ったよ」

「何が?」

「邦画ってなんでスケールが小さくて湿っぽくてぐだぐだが好きだって」

「そういう内容なの?」

「でもさ。それも客の思い込みで最後に裏切られちゃう」

「じゃあ、あれで良かったの?」

「うん。良かったと思うぞ。なんてね」